昔来た道
これはみんなのものが合言葉
大切に大切に
アイツにとられた
十字傷が合言葉
何ぞや何ぞや
此処は何処?
城に着くまでの道は、以前父と通ったことがあった。
それに、南と北を魔犬の壁で区切っただけだから難は無かった。
城に着くと、案の定、ノッカーを叩いても反応が無いし、扉だって開かない。まあこれは解っていた事だ。
剣(つるぎ)を抜いて、扉を十字に斬り付ける。昔話で父から聞いた話だ。
『我此処を守る者なり
我傷つけた者に訊く
其方の目的は何ぞ?』
偉くくぐもった声が頭に響き渡る。あまり気持ちの良いものではない。
「囚われた娘を奪いに来た」
心地の悪さに、言葉を選ぶ事も出来なかった。
『我の記憶なり
今日東で泣く子を見た
今日南で笑う子を見た
今日西で怒る子を見た
今日北で起こった事は知らぬ』
頭に響く声は益々不快感を増す。それでも聞き逃さないように必死になった。
『我の記憶なり
昨日は向かいに弓を見た
今日は何も見ぬ』
吐気を催す程響き渡り、反響している。
『我の記憶なり
昔賢者は我を此処に刻んだ
解かれよ封印
我は何ぞや?』
総ての身体の不調がきたような不快感に襲われながら、必死で答えた。
「お前は『太陽』ではないのか?」
突然体内の不協和音が消え、衝撃で俺は地面に叩きつけられた。
扉が、この世では考えられない程の光を発している。
『新たな賢者は此処にあるぞ
答えをみつけた
魔犬はただの犬
新たな賢者は何ぞや?』
「俺は吟遊詩人で、賢者になる気はない」
『ならばこの扉どう守る?』
「入りたい人は、入ればいい。
中の人は、逃げたきゃ逃げろ」
『吟遊詩人の仰せのままに
我陽の光に戻るとしよう』
何の音も無しに、扉は開いた。
扉のうらでは、太陽を象ったレリーフが溶けて消えていった。
「誰か居ないのか!」
まだ少し残る不快感に語調が荒くなった。
『名を教えては下さらんか』
先ほどとは違う、耳に心地良いバリトンが聞こえてきた。
「ジェイド・マクミランです」
『ギルダ・マクミランの息子ではござらんか』
「そうです」
『残念だが、ギルダは悪魔に喰い尽くされた』
衝撃だった。
「今何処に。」
『王を護った結果なのだ。屍は私がクルドへ送り、埋葬した』
「母の墓の側か?」
『リラ・ダルタンであるか?』
「そうです。父の妻、リラ・マクミランの旧姓はダルタンでした」
『心配はない、そのようにいたした』
俺は独りか。
「貴方はどなたですか?」
『私は"太陽"の賢者の記憶であります。貴方が呼ぶまで誰も呼びませんでしたが』
「貴方の事は」
『"サン"とお呼び下さい。呼び捨てで結構』
「サンの事は、王はご存知なのですか?」
『ご存知ないでしょう。それに驚かれるでしょう』
「と、言うと?」
『私は歴代の賢者と違い、フェリアの人間であるので』
「それは都合がいい。クルドだろうとフェリアだろうと、賢者になる事が出来る事を王に伝えられる」
『何を言っておられるので?』
「貴方が、王付きの賢者になればよいのです。前の王の時、ブラックと呼ばれる賢者がしたように助言を」
『そうしたいのだが、いま呼ばれて初めて封印が解け、王に会った事はないので』
「これから会えばいい」
あいつにもこれから逢える
アイツにもこれから会える
To be continued...
* * *
お待たせしました!
『AMULET』の続きです。
中の問答が難しいかどうかは微妙ですが、これが精一杯でした(汗)。
もう少しでクライマックスです。
果たして幼ない王はどうなるのか…。
これはみんなのものが合言葉
大切に大切に
アイツにとられた
十字傷が合言葉
何ぞや何ぞや
此処は何処?
城に着くまでの道は、以前父と通ったことがあった。
それに、南と北を魔犬の壁で区切っただけだから難は無かった。
城に着くと、案の定、ノッカーを叩いても反応が無いし、扉だって開かない。まあこれは解っていた事だ。
剣(つるぎ)を抜いて、扉を十字に斬り付ける。昔話で父から聞いた話だ。
『我此処を守る者なり
我傷つけた者に訊く
其方の目的は何ぞ?』
偉くくぐもった声が頭に響き渡る。あまり気持ちの良いものではない。
「囚われた娘を奪いに来た」
心地の悪さに、言葉を選ぶ事も出来なかった。
『我の記憶なり
今日東で泣く子を見た
今日南で笑う子を見た
今日西で怒る子を見た
今日北で起こった事は知らぬ』
頭に響く声は益々不快感を増す。それでも聞き逃さないように必死になった。
『我の記憶なり
昨日は向かいに弓を見た
今日は何も見ぬ』
吐気を催す程響き渡り、反響している。
『我の記憶なり
昔賢者は我を此処に刻んだ
解かれよ封印
我は何ぞや?』
総ての身体の不調がきたような不快感に襲われながら、必死で答えた。
「お前は『太陽』ではないのか?」
突然体内の不協和音が消え、衝撃で俺は地面に叩きつけられた。
扉が、この世では考えられない程の光を発している。
『新たな賢者は此処にあるぞ
答えをみつけた
魔犬はただの犬
新たな賢者は何ぞや?』
「俺は吟遊詩人で、賢者になる気はない」
『ならばこの扉どう守る?』
「入りたい人は、入ればいい。
中の人は、逃げたきゃ逃げろ」
『吟遊詩人の仰せのままに
我陽の光に戻るとしよう』
何の音も無しに、扉は開いた。
扉のうらでは、太陽を象ったレリーフが溶けて消えていった。
「誰か居ないのか!」
まだ少し残る不快感に語調が荒くなった。
『名を教えては下さらんか』
先ほどとは違う、耳に心地良いバリトンが聞こえてきた。
「ジェイド・マクミランです」
『ギルダ・マクミランの息子ではござらんか』
「そうです」
『残念だが、ギルダは悪魔に喰い尽くされた』
衝撃だった。
「今何処に。」
『王を護った結果なのだ。屍は私がクルドへ送り、埋葬した』
「母の墓の側か?」
『リラ・ダルタンであるか?』
「そうです。父の妻、リラ・マクミランの旧姓はダルタンでした」
『心配はない、そのようにいたした』
俺は独りか。
「貴方はどなたですか?」
『私は"太陽"の賢者の記憶であります。貴方が呼ぶまで誰も呼びませんでしたが』
「貴方の事は」
『"サン"とお呼び下さい。呼び捨てで結構』
「サンの事は、王はご存知なのですか?」
『ご存知ないでしょう。それに驚かれるでしょう』
「と、言うと?」
『私は歴代の賢者と違い、フェリアの人間であるので』
「それは都合がいい。クルドだろうとフェリアだろうと、賢者になる事が出来る事を王に伝えられる」
『何を言っておられるので?』
「貴方が、王付きの賢者になればよいのです。前の王の時、ブラックと呼ばれる賢者がしたように助言を」
『そうしたいのだが、いま呼ばれて初めて封印が解け、王に会った事はないので』
「これから会えばいい」
あいつにもこれから逢える
アイツにもこれから会える
To be continued...
* * *
お待たせしました!
『AMULET』の続きです。
中の問答が難しいかどうかは微妙ですが、これが精一杯でした(汗)。
もう少しでクライマックスです。
果たして幼ない王はどうなるのか…。
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